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第2話 これからどうする |
信は反日の国にタイムスリップしてしまった! (ここにいては危ない。とりあえず車に戻ろう!) 今までの通り道を思い出しながら慎重に歩いた。しかし、何度か間違えた。 (目印をつけておけば簡単に戻れたはずなのに。デジカメで曲がり角などを写しておけば...) と後から思いついても遅かった。川から草木を掻き分けたところを見つけて、その場所を確認して進む以外に方法はなかった。車は唯一の住家になるとは想像もしていなかった。必死で探していると元の場所にやっと着くことができた。車の中で一休み。 (こういうときは、まず正しい現状把握が大切だ。といつも職場の上司がいっていたな。そうだ!小学校のときにやった5W1Hで考えてみよう。 1.いつ:数時間前 2.どこで:トンネルの中で 3.誰が:オレ 4.何を:運転していたら 5.どうした:タイムスリップした 6.なぜ:わからない これでは何も有効な分析はできない。 それでは、現状はどうなっているか? タイムスリップしたみたいだ。 よりによって反日の国に! 反日の国へタイムスリップするとどうなんだろう? 時々見ていた韓国ドラマの時代劇では、毎回のようにいろんな人が殺される。水戸黄門のように勧善懲悪とはならない。騙し、騙されの世界だ。これはヤバ過ぎる。 あっ、そうだ!この時代は豊臣秀吉が朝鮮出兵したときより、後なのか前なのか?もし、出兵後の時代ならすごくヤバいんじゃないか?女の大統領が言っていたを思い出した。) 「加害者と被害者という歴史的立場は、1000年の歴史が流れても変わることはない」 (ということは、日本人だとバレれば、命はないと思ったほうがよさそうだ。出兵前ならいいんだが...どちらかわからない。この時代の人間と接触することは避けたほうが良さそうだ。これからどうするか? 自給自足の生活を送り、現代に戻れるときを待つ。 となりそうだ。 自給自足のため生活に必要なこと。衣食住はどうなる? 衣:土曜日に洗濯しようとロッカーに貯めていた作業服があるのはラッキー。 食:問題だ。どうやって食べ物を確保するか? 住:車で雨風を凌げる。これでOK。 食に問題があることがわかった。食を確保するために......今持っているものを整理してみよう。 車: バッテリーがなくならないように、ケーブルを外そう。 携帯電話: 役に立たない。もしものために電池を外そう。 デジカメ: 役に立つかもしれない。これも電池を外そう。 ペンダント: これはこの時代で賄賂でつかえるかも知れない。大事にしよう! 鎌: これは大切な道具になりそうだ。 ゴルフクラブ: これは出番がなさそうだ。いや、もしかして未来でゴルフの発祥はわが国だなんて言い出しそうだ。捨てる必要はまったくなし。もし、獣と戦うときに武器になるかもしれない。 電卓: 原始的な生活を始めるにあたり何か計算することはあるのだろうか?ソーラー電卓だから、使う場面があっても電池切れを心配しなくていい。 釣りの道具: これが一番大切だ。先ほど川があることがわかった。川で魚を釣って食料にできる。 大体のイメージができた。 川で魚を獲って、 鎌とゴルフクラブでウサギや狸を獲って、 キノコや野草を採って、 これで何とか食べていけそうだ。 今持ってハードウェアについては整理できた。次にソフトウェアだ。オレ自身の能力がこの時代で使い物になるのか?オレはコンピュータのソフトウェア技術者だ。それもプログラマーといわれるあまりスキルの高くない仕事をしている。設計書があってそれに基づいてプログラムを書く仕事だ。あまり高度なことはやっていない。また、中学も高校も専門学校でもあまり勉強をしなかった。就職氷河期でどこにも就職できず、派遣で仕事をしている。電気の知識は全然ない。コンピュータを作るなんてできっこない。それどころか、ソロバン、計算尺もぜんぜんだめ。この時代でほら吹けるような知識も技能も何にもない。たとえば医者だったら、何も医療器具がなくても食事療法とかこの時代で活躍できる。あと何だ。おー、農学部なんか出ていれば、活躍できそうだ。要するにコンピュータがなければオレは何もできないということだ。 よくわかったこと: 未来人としてのアドバンテージはゼロだ。 いろいろなタイムスリップの物語で未来人が活躍するが、オレにはそれはなさそうだ。悲観ばかりしてもいけない。何もできない。何も知らない。ということが有利になることはないのか? ある! タイムスリップしたヒーローたちは、自分が歴史を変えてしまっていいのか?ということで常に悩む。しかし、オレは日本の歴史もこの国の歴史も知らない。 オレは歴史を変えることにまったく心配しなくていいんだ! ) |