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第1話 反日の国にタイムスリップ
とある土曜日。昨日は信の職場で飲み会があった。給料日だったのでたまには気分転換と信にとっては大金を用意して2次会3次会と飲み歩いた。飲み続けるうちにあまり記憶がなくなっていた。誰かにビジネスホテルまで送ってもらったような気がした。たぶんお店の英子に。翌朝遅くに起きた。チェックアウトの時間にやっと間に合うくらいの時間だった。気が付くとペンダントをしている。

(あれいつの間にペンダント?)
記憶が飛ぶくらい呑んだので財布を落としていないか?確認する。財布はテーブルの上においてあった。

(よかった。)

財布の中身を確認する。ほとんど残っていない。

(何でだ?いつもの飲み屋ばかりだったから、こんなに金を使うはずはないんだけど。もしかして、英子にくれてしまったのか?覚えていないからあまり考えても仕方ない。これからこんな深酒しないようにしよう!いや、きっとまた繰り返すだろうな。これって毎度のことだもんな。)

ホテル代は前金で払っていたので、問題なくホテルを後にして銀行へ。

(金を使いすぎた。週末はおとなしくしていよう。)

自宅に向かい車を運転する。

栃木市と佐野市を境にあるトンネルを抜けるときだった。

(トンネルの中が暗い。転電でもあったのか?いやそんなことない。異常に暗すぎる。真っ暗だ!いつもなら20秒くらいで通過するトンネルをもう1分以上走っている。それに、タイヤが道路に接地する感覚がぜんぜんない。何か変だ。すごく変だ。)

強い衝撃が襲った。突然、明るくなった。緑色の光が飛び込んできた。道路がなくなっている。周りは雑木や草が生い茂っている。

(事故ったか!いや違う。もし、ハンドル操作を誤って道路から転落してもここらへんは砕石を集めて貯めているところだから、こんなに雑木や雑草が生えているところはないはずだ。何がおこったのか?どこにいるんだろう?)

ナビを見る。トンネルのある地図のままだ。よく見るとGPSの電波を受信していない。
(おかしい。)

ラジオをつけてみる。何も入らない。AMもFMもダメだ。携帯電話を見ると、アンテナが1本も立っていない。
(どうやら電波を受信する機器がまったくダメだ。何でだ?太陽の黒点の活動が電波に影響を与えるみたいな話を聞きたことがあるがこんなに全滅するなんてことはあるのか?)

(先週の日曜日に町内会で河川清掃をやった。そのときの鎌がトランクにある。とりあえず鎌を使って草木を掻き分け、今どこにいるのか確かめよう。どの方向に行けばいい?とりあえず低いほうへ進んでみよう。)

鎌で邪魔な草木を切りながら進むのは重労働であることがわかった。やがて水の流れる音がきこえてきた。川があるようだ。早速、川の方向に進んだ。疲労困憊になったが、川にたどり着いた。水を飲む。超疲れたときの水はこんなにもうまいのかと信は感激した。川に沿って進めば草木を刈る必要がないので下流まで行くことにした。

しばらくすると、田んぼとぼろぼろの家らしき物が見えた。こんな家みたことがない。何か時代劇の貧しい農民の家みたいに見える。

(何がなんだかわからない。近づくのはヤバイかも。とにかく現状を少しでも正確に把握しよう。)

いつも持ち歩いているデジタルカメラの望遠を最大にしてシャッターを切る。写真を液晶に表示させて拡大する。ぼろぼろの服を着た百姓らしき人物と、悪代官のような人物が写っている。この悪代官のような人物は黒い麦藁帽子のようなのをかぶっている。

(あああああ〜〜〜〜〜〜!これって韓国の時代劇にでてくる役人がかぶる帽子じゃないか!)
何てことだ。オレは反日の国にタイムスリップしてしまった! (;_;)  )